木と鉢の調和、悠久の時が凝縮された姿に宿る生命力と神性。
盆栽を愛でるには、すべてに通じる観賞のポイントがあります。
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四季の美しさを凝縮し、空間の調和を愛でる
盆栽の起源は古代中国にあり、唐の時代には、小さな器に樹木を植える趣味が支配層・知識層の間で楽しまれていたといわれます。日本には鎌倉時代初期に伝わって以降、独自の発展を遂げ、江戸時代後期には一般の人々にも広く愛好される大衆的な趣味となり現在に至っています。
植物を鉢に植える文化は世界各国に見られますが、盆栽は草木と鉢や石が一体化した全体の「美」を観賞するものです。自然界の壮大な景色を庭や室内に取り込むことは不可能。しかし、荘厳さ、優美さ、侘び寂びなどの自然美を一鉢の盆栽に見出すことは十分可能です。風雪に耐えて形作られた曲がりくねった幹模様や荒れた幹肌。幾星霜を越えて白骨化しジンやシャリとなり、さらには空洞化した幹。それでも力強く生き抜く樹木の生命力を、日本人の感性と技で表現するのも盆栽ならではの世界です。
盆栽とは、四季折々の自然と調和して生きる日本の風土が生み出した、自然崇拝の芸術作品といえるでしょう。
盆栽で表した雄大な景色を室内で観賞
盆栽の起源は古代中国にあり、唐の時代には、小さな器に樹木を植える趣味が支配層・知識層の間で楽しまれていたといわれます。日本には鎌倉時代初期に伝わって以降、独自の発展を遂げ、江戸時代後期には一般の人々にも広く愛好される大衆的な趣味となり現在に至っています。
盆栽の晴れ舞台は、展示会や家屋の中で美しく飾られること。家屋内では床の間が正式な飾りの場となり、季節の行事や客人を招いた際に、その場の演出役となります。床の間に飾ることを「床飾り」といい、屏風を立て毛氈(もうせん)を敷いた上に飾るのは「席飾り」といいます。
床飾りは基本的に「主木」「添え」「掛け軸」の三点で構成されます。主木に松柏類を用いた時は、添えは花ものや草もので季節感を表現します。主木は掛け軸に向かって流れるように置き、掛け軸はあまり目立ち過ぎず主木を引き立てる意匠のものを選びます。席飾りは、主木と添えの二点飾りとなります。
最近は和風建築でも床の間のない家も増えており、マンションなどでは和室がないことも少なくありません。長きにわたり培われてきた調和と美の法則を押さえつつ、現代の生活空間にいかに応用させるかは趣味家の腕の見せどころであり、それもまた盆栽の楽しみといえます。
全体と各部を味わうのが観賞のポイント
盆栽の観賞時には樹の正面に立ち、最初は鉢、卓(しょく)を含めた全体を眺めてから細部に移ります。
目線は樹の高さの中ほどに合わせ、下から「根張り」「立ち上がり」「幹」「枝ぶり」「葉」「花」など部分的な趣おもむきを味わいます。
五葉松に見立てれば、土を鷲づかみにしたようなどっしりとした「根張り」は老大樹の貫禄を感じさせます。立ち上がりの緩やかな曲線は優雅さや鷹揚さを、荒れた幹肌は風雪に耐えてきた長い歳月を感じさせ、緑の葉からは樹の強い生命力が伝わってきます。
盆栽は人が長年、丹精を込めて育成し、中には数百年にわたって維持管理されてきたものもあります。そのような時間と人の技に思いを馳せるのは盆栽ならではの楽しみ方といえるでしょう。いっぽう、有望な若木の将来の姿を想像するのも楽しいものです。
盆栽は一般に、古くなればなるほど味わいが増し、観る者の心を揺さぶります。人生に置き換えると、人として完成の域に達する晩年の姿といえるかもしれません。
葉
葉は小さく密生していると大木に感じやすい。枝葉は芽摘みや葉刈りによって増やし、細かくすることが可能。
コケ順・枝配り
立ち上がりから上に向けて幹が次第に細くなっていく様を「コケ順」といい、その具合が無理なく自然なほど「コケ順の良い樹」として評価される。上に行くにしたがい枝と枝の間隔が狭くなるように作るとバランスよく、大木感が出やすい。
幹肌
盆栽は幹肌をいかに古く見せられるかも重要。荒れた肌は古木感をもっともわかりやすく際立たせる。
立ち上がり
幹の足元の部分。盆栽の一番の見どころといってよく、ここの模様や太さが樹の魅力に直結する。
根張り
しっかりと張った根が樹に力強さと安定感をもたらす。
ジン(神)、シャリ(舎利)
歳月を経た松や真柏では、幹や枝の一部が枯れて、そのままの形を残すことがあります。こうした幹は白い肌を見せることで、緑色の葉と美しいコントラストを生み出します。枝先のものを「ジン(神)」、幹の一部が枯れたものを「シャリ(舎利)」と呼びます。