公開日: 2020年1月9日 - 最終更新日: 2020年1月30日

盆栽と野球指導の共通項とは?<2/2>

JAPAN BONSAI 編集部
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全ての物事を野球の指導に置き換えて考える佐々木監督だからこそ、ひらめきは多い。庭づくりにまつわる話は、まだまだ続く。

後編:自然の摂理から学べ。

視点を変えるだけで、物事の見かたが変わる

庭師は縁側に座って、お茶を飲みながら全体を眺めていますよね。この何気ない行動は、実は全体を俯瞰して見ているんだと気づいたんです。野球に置き換えると、青春ドラマのように一対一でノックすることも大事ですが、ちょっと待て…と。優秀なコーチにノックを任せて、自分は高いところから、まるで縁側から庭師が見るかのように俯瞰して見てみよう。
するとですね。自分がノッカーだと、例えばショートとの一対一しか見ていない。でもね、上から見るとショートにノックしている時のライトが気になって仕方がない。奴ら何してんだ…と(笑)。ここは監督として、すごく大事な視点だと思います。

視点を変えるだけで、物事の見かたが変わる。これは野球指導以外にも通じる発想だ。
さて、佐々木監督はイチョウが好きだった。そこでお父様にイチョウの木をねだると…。

親父が持ってきたのは、鉢に植えられたイチョウだったんです。「親父、違うよ。俺が欲しいのは、もっと大きなイチョウの木だよ」。すると親父に、「馬鹿野郎」とまた笑われました。「鉢に植えてあるから小さいんだ。植え替えれば大きくなる」と。
それを聞いてハッとしました。人間も一緒だ。小さい器の中に入れたままだと、小さく育つ。大きな器に入れると、大きく育つ。その時々に合った器を選んであげる必要があると。
これは感覚的な話ですが、器を目標値に置き換えると、目標値は少し上に設定したほうが効果的です。ピッチャーに160キロを目指せと言ったら、158キロしか出ないような気がするんです。

実はこのアドバイスを受けたピッチャーは、若かりし頃の大谷翔平だ。佐々木監督は大谷翔平に「163キロを目指せ」と伝えたのだが、大谷翔平はそれを見越して、既に「目標163キロ」と学校のウェート室に貼り出していたという。指導の賜物か、はたまた素材の良さか。いずれにせよ、一流は違うと感じさせる逸話だ。

盆栽への興味

庭が完成すると、やることがなくなってしまった佐々木監督。すると地植えではなく、鉢植え。つまり盆栽に興味を抱いたのだ。盆栽は出来たものを買ってきて、眺めるのが主だという。監督業に加え、日本史の先生として授業も受け持っている。長期の遠征もある。なかなか盆栽にかまっていられないのが現状だ。時には枯らしてしまうことも…。

グラウンドのバックネット裏にも盆栽が置いてあります。朝、水まきしたりしていますよ。最初の頃は、よく枯らしました。どれも同じように水を与えるから、枯れて当然ですよね。枯らした後に盆栽のDVDを観たりするから自分でも笑っちゃうんですけど、失敗してもいいと思っています。失敗から学ぶべきことは多いですから。

庭木、そして盆栽へと佐々木監督の興味は尽きないが、自然から学ぶことは多いという。

日本人が養ってきた美意識

日本人は自然を美しいと思う意識が強いと思います。さらに経済的な豊かさとは違った誇りや生きがいをよしとする精神もあると思います。でも最近はそんな美意識が薄れ、欧米にかぶれた気もします。日本では盆栽=ご年配の趣味みたいなイメージがありますが、逆に欧米では若い世代の間でBONSAIが流行っていると聞きます。京都に行くと外国人が多いですし、有名な日本庭園もしかりですよね。欧米人が日本古来の伝統に興味を抱き、日本人がそこから離れているのが現状ではないでしょうか。自然に身を置くと、日本人が養ってきた美意識を再認識させられます。環境の中に自然を取り入れるだけでも、気づくことは多いのではないでしょうか。小さな盆栽ならマンションでも置けますしね。

佐々木監督の野球指導に対する熱意、また何事からも学ぼうとする姿勢には脱帽させられた。いまでは盆栽だけではなく、石を見て、自然の摂理と野球の指導法を結び付けて考えることがあるそうだ。
花巻東高等学校 硬式野球部の、さらなるご活躍を期待しています。

Profile
佐々木 洋
1975年生まれ、岩手県出身。国士舘大学卒業。卒業後、横浜隼人高等学校に赴任し、同校硬式野球部コーチを経て、1999年に花巻東高等学校へ。2002年より同校硬式野球部監督。春夏合わせて9回、甲子園に出場(2020年1月現在)。

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