公開日: 2019年12月20日 - 最終更新日: 2020年3月25日

(株)松田清松園

JAPAN BONSAI 編集部
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日本一の松盆栽の産地として知られる、高松。その歴史は古く、約200年前の江戸時代・文化年間の頃に始まったとされている。四季を通して温暖な気候で少雨、さらに水はけのよい砂壌土は、松の育成に適していたのだ。そんな高松から世界に向けて盆栽を送り届けているのが、松田清松園である。

高松から世界へ発信する希有な存在、松田三男

さまざまな課題を解決しないと、未来はない

高松盆栽は鬼無地区と国分寺地区に分かれており、松田清松園は鬼無地区の中ほどにある。代表の松田三男さんは4代目で、松田さんと言えば海外に強いイメージだが…。

昔の話を聞くと、鬼無地区でツアーを組んで、バリ島に行ってるんですよね。40~50年前に。その頃から海外に販路を求める姿勢は強かったみたいですね。また、日本で山取りができなくなった1960年代には、「韓国はまだできるぞ」って買い付けにも行ってたそうです。

うちの親父は外国に売りたかったわけではなく、買ってくれた人がたまたま外国人だっただけ。私もそんな感覚で、お客様に変わりはないですからね。

なるほど。以前は北米向けの出荷がメインだったが、いまは台湾に移行しているという。国内外への出荷比率は、海外向けが9割も占める。ちなみに、海外との取引となると、言葉や検疫が問題になりそうだが…。

私は中学卒業後、高松高専に進学したんですね。在学中に湾岸戦争があって、戦争になったら英語が話せないと殺されるなって思ったんですよ、ホントに。それで卒業後、公務員試験に受かっていたのですが、親父に「海外に留学したい」と直訴。景気も良かったんでしょうね。イギリスのマンチェスターに留学しました。いや~、でもね。マンチェスターの冬って寒いんですよ。高松とは大違い(笑)。それに毎日くもり空で、気分もどんよりするから、12月だったかな、日本に帰ってきました。それで香川大学に編入して、卒業後は公務員になろうかと思ったけど、儲からなさそうだから、親父に「盆栽やります!」って言いました(笑)。

こうして松田さんは家業を継ぐこととなる。言葉の問題がクリアなのは理解できたが、検疫に関してはどうだろうか?

昔はうるさくなかったんですよ。例えば輸出先によっては地べたに植えてて良かったし。それが線虫の問題で地面から50センチ上げろになって。さらにいまはネットハウスに入れて2年とか3年とか寝かせる必要がありますからね。まぁ、勉強すれば分かりますよ。

高松には台湾やアメリカから業者が買い付けに来ます。他の園から輸出方法などを聞かれれば丁寧にお教えしますが、やっぱり「面倒!」と思われるみたいですね。だから高松で積極的に盆栽を輸出しているのは、うちくらいじゃないですかね。

自然と販路を海外に求めた松田清松園だが、いま危機感を覚えているという。売る物がなくなってきているのだ。

物がなくなってきました。動かせる高級品は、そうそうないですよ。園芸みたいな盆栽すら少ない。でもね、生活がかかっているから、日銭を稼ぎたいんですよ。だから出荷する。だから製造する時間がない。生産量は最盛期の1割あるかないかじゃないですか。早急に出荷しながら製造するサイクルを整えないと…。

高松では松を育てる場所を「たんぼ」という。休耕田で松を育てているのだ。時期になるとひと晩、びたびたになるくらい水を張るという。そのためには水路がある休耕田が好都合なのだ。松田さんの田んぼには70年、80年ものの松が植えられている。もちろん、いまでもコツコツと苗を植えている。それでも足りないのだ。

もう盆栽界の仕組みを変えなきゃ駄目ですよ。多くの盆栽家は、商人であって技術者です。絵画の世界では、自分で描いて自分で売るのは下のレベルですよ。画家は真剣に描く、それを画商が売る。そういう仕組みが、盆栽界にも必要なんじゃないでしょうか。

商売の方法も、変えていく必要があります。単純に売り買いするだけではなく、YouTubeで広告料が得られる仕組みを作る、時間を売る、つまりレンタル盆栽ですね。そういうことを積極的に行わないと、ますます先細りです。若い世代が生業として成り立つ業界にしないと。盆栽界をね。

松田清松園への問い合わせ先

松田清松園
〒761-8023 
香川県高松市鬼無町佐藤166-2 
TEL 087-881-2947 
FAX 087-881-0105
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